2052年をSFプロトタイピング⑨

30年後の『ふるえ』
特集記事で未来予想

プロトタイピング協力:矢代真也(SYYS LLC)

『ふるえ』が30年後にも発行されていたら、どんな記事が生まれるのか、SFプロトタイピングで未来を予想する本コーナー。第9回のテーマは「トークン」です。NFTに代表されるブロックチェーンを利用したテクノロジーはどうやって実用化の道をたどるのか、記事の予告風にSFプロトタイピングして、未来の姿を想像してみました。
※この記事はフィクションであり、登場する製品などは架空のものです。

「人生の“初めて”の瞬間をプレゼントに」 2052年7月発行 Vol.221より

生まれて初めて話した言葉、初めて立ち上がった瞬間、初めておつかいをする姿など、人生の“ 初めて” をブロックチェーンに記録するサービスが人気を博している。2052年の今では、子どもが生まれると24時間ずっとライフログを取り続けることが常態化しているが、このサービスは、その膨大なデータの中からAIが“人生初めて” の瞬間を見つけ出し、NFT化するものだ。成人した際、それまでの“ 初めて”の瞬間に関するNFTが本人にプレゼントされる。特に、「ママ」「パパ」という言葉を初めて話した瞬間の人気が高いようだ。サービス利用中の家庭にお邪魔して、お子さんに“ 初めての取材”を試みた。

思い出とは、断片的な記録であったり、曖昧な記憶から形成されるものでした。しかし、思い出がデジタル的に“ 正しく” 記録される時代はすでに始まっています。改ざんされないと同時に、その記録を消すことができなくなった思い出の存在は、人生にどのような変化をもたらすのでしょうか。(編集部)

「公園トークンから始まった住みやすい街づくり」 2052年9月発行 Vol.222より

最近は人と出会う場はバーチャル空間が増え、公園などの屋外施設は放置されているところが多い。しかしある自治体で、利用者に公園の運営・管理に参加してもらい、同時に園内の施設やグラウンドの貸し出しなどを優先的に受けられるトークンを発行したところ、それが大好評だ。公園を有効利用するアイデアやイベント開催の要望が集まる一方で、「わたしたちの公園」という意識が芽生え、ゴミを拾ったり、あいさつを交わしたりと、公園という空間が生き生きとし始めた。さらに図書館トークンや、劇場トークンなども発行され、街全体が活気を取り戻したという。中には、遠隔地に住み、実際にその施設を利用することもないのに、トークンを購入する人もいるという。トークンがもたらす心理的影響について取材した。

近所に美しい公園があるとQoLが上がります。公共施設に限らず、自分たちが暮らす街や周辺のお店、マンションなどが生き生きとするための媒介としても、トークンは活躍するかもしれません。(編集部)

「世界中の人々が所有したアートが地球をつなぐ」 2052年11月発行 Vol.223より

ハートが描かれたデジタル画像。手描きのぬくもりが伝わってくるこのグラフィックは、小さな子どもが描いたものとされ、NFT化されたあとに数多くの人々の手を渡ってきた。著名人が一時的に所有して話題となり、入手したらすぐに他人に譲られることを繰り返して、履歴に記録された過去の所有者数は1億人に到達。今では地球上のみんなとつながろうという平和の象徴となっている。一般に履歴の多く付いたNFTは価値があるとされるが、この作品はケタ違いで、今現在も地球のどこかで取り引きされている。世界中の人々が所有したものを受け継ぐ感覚について、今まさにこの作品を所持している人に話を聞いた。

これまでにも、多くの人の手を渡るチェーンメールが流行したことがありました。しかし、所有者や所有履歴がハッキリと残るようになると、デジタルデータにも違った役目が生まれる可能性があります。(編集部)


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