『マクルーハン理論 —電子メディアの可能性』

マーシャル・マクルーハン、エドマンド・カーペンター編著、大前正臣、後藤和彦 翻訳/平凡社(2003)

1950年代に両著者が編集したコミュニケーション専門誌「Explorations」に寄せられた論文を集めたものである。1960年代にブームとなった「メディアはメッセージ」というマクルーハンの言葉の思想的源流に触れることができる。また、併せて掲載されている同時代の研究者たちの論考は、より深い理解へと導いてくれる。

『メディア論の地層 —1970大阪万博から2020東京五輪まで』

飯田 豊 著/勁草書房(2020)

日本で「メディア論」はどのように形成されたのか。本書では、大阪万博をはじめとする、日本でメディア論的思想が覚醒する契機となった出来事が取り上げられている。メディア論、メディア・イベントだけでなく、インターネットやテレビのメディアリテラシー、さらには共同体のメディアまで重層的な議論が展開されている。

『AI 倫理 —人工知能は「責任」をとれるのか』

西垣 通、河島茂生 著/中央公論新社(2019)

自動運転車の事故は誰の責任なのか。AIによる創作物は誰の作品なのか。来るべきAI社会を倫理的側面から論じた書である。AIは人間の作ったプログラム通りに作動する他律型機械であり、ある種のメディアとして考えることもできる。本号の観点から、AIとSWARMのメディアとしての違いを考察するのも興味深い。

『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために —その思想、実践、技術』

渡邊淳司、ドミニク・チェン 監修・編著、安藤英由樹、坂倉杏介、村田藍子 編著/BNN新社(2020)
「ウェルビーイング(Wellbeing)」とは、身体的にも、精神的にも、そして社会的にも「よい状態」であること。本書では、これまで西欧で探求されてきた個(“わたし”)のウェルビーイングを解説するだけでなく、日本的な共(“わたしたち”)のウェルビーイングのあり方を探求する論考とワークショップが掲載されている。

『イノベーション・スキルセット —世界が求めるBTC型人材とその手引き』

田川欣哉 著/大和書房(2019)

現代社会において、ビジネス(B)×テクノロジー(T)の伴走者として、クリエイティビティ(C)は重要な役割を果たしている。そのことを、デザインの具体的事例とともにバランスよく紹介している。職種やプロジェクトの大小を問わず、BTC型人材の重要性や、そこへ向けたモチベーションを引き出す本である。

『直観の経営 —「共感の哲学」で読み解く動態経営論』

野中郁次郎、山口一郎 著/KADOKAWA(2019)

本書は経営論でありながら身体性を刺激する言葉であふれている。“科学の方法論だけではなく、その組織を構成する一人ひとりの共感に訴えるものでなければ、メンバーの潜在能力を発揮させることはできませんね。” “一人ひとりの人材を「コスト」としてではなく、「知を生む存在」と位置付けるところから物語は生まれる。”

『内藤廣の頭と手』

内藤 廣 著/彰国社(2012)

建築家、内藤廣は建築を構想する際にはダイアグラムを描く。時折、心の中に住まう情熱的な「赤鬼」と冷静な「青鬼」に語りかけながら。そして、葛藤や祈り、使命や希望、さまざまなものが流転する中で、ダイアグラムは描かれ、建築が創造されていく。内藤廣のクリエイティビティへの思いが実感できる一冊。

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