2052年をSFプロトタイピング⑩

30年後の『ふるえ』
特集記事で未来予想

プロトタイピング協力:矢代真也(SYYS LLC)

『ふるえ』が30年後にも発行されていたら、どんな記事が生まれるのか、SFプロトタイピングで未来を予想する本コーナー。第10回のテーマは「場づくり」です。人々が求める居心地のよい場所は、将来どのように生まれていくのか、記事の予告風にSFプロトタイピングして、未来の場づくりを想像してみました。
※この記事はフィクションであり、登場する製品などは架空のものです。

「透明人間があふれる街で」 2052年9月発行 Vol.222より

オンライン上に形作られるバーチャルワールド。今では多くの人々がメタバース社会でも生活しているが、現実社会とは異なる人への接し方が話題となっている。ログインしている際、自分から周りのアバターが見えても周囲からは自分が見えない「ステルスモード」は、一時的に席を外したりするときのために用意された機能だ。しかし最近、ステルスモードのまま歩き回るユーザーが増えており、ついに街の中を大量の透明人間が歩き回る事態になってしまった。数万人がログインしており、空間は人であふれているにもかかわらず、見た目は閑散とした状態だ。ただし、足音や息づかいなど人が生み出す音は消えない設定であるため、雑踏の音だけは聞こえている。人の存在を感じたいけれど、話しかけられたくないという、ステルスモードにハマる人の話を聞いた。

リモートワークやリモート学習が一般的になり、人とつながりながらも、自分の空間や心理的安全は確保するという新しい人との付き合い方が生まれつつあります。身体的接触が減少する世界での場づくりは、どのように変化するのでしょうか。(編集部)

「ファシリテーション職人はBARにいる」 2052年11月発行 Vol.223より

暗いカウンターで、ひとりでグラスの酒を飲み、ときおりバーテンダーと言葉を交わす……。バーという空間では、それぞれの人のプライバシーが守られた安心感の中で、自分をさらけ出すことができる。そこは実は、1on1の対話のノウハウが詰まった空間でもある。そんなバーやスナックでの会話をAI に学習させ、コミュニケーションファシリテーション・ロボとして販売する企業が現れた。心地よい空間を提供するプロであるバーテンダーの学習データを集めるため、その企業はバーやスナックの経営にも乗り出しているという。創業者に話を聞いた。

ビジネスから趣味のコミュニティまで、コミュニケーションを円滑にするためのファシリテーションのニーズは高まっています。スムーズに会話を進める秘訣は、居心地のよいバーやスナックなどのセミプライベートな空間に隠れているのかもしれません。(編集部)

「複数の未来を見ながら話し合う場所」 2053年1月発行 Vol.224より

社内プロジェクトなどで意見の対立が生まれてきた際に、それを発展的に解決するAI エージェントが注目されている。会議などでそれぞれの言い分を聞きながら、そこから起こる可能性のある複数のストーリーを導き出し、ドラマのような映像を生成して即座に見せてくれる。複数の未来を映像で見ることで、当事者たちは選択肢を現実味を持って理解し、効率的に話を進めることができるという。また、ビジュアルで提示されることで目的意識がハッキリしてモチベーションも上がり、話が前向きに進むそうだ。自分たちも登場する未来をドラマ仕立ての映像で見た感想を聞いてみた。

どれだけ具体的な未来を描けるかは、プロジェクトをスムーズに進める上で重要です。今は、目の前で行われている議論に基づいてグラフィックファシリテーションが行われていますが、未来の世界ではどのような手法になっていくのでしょうか。(編集部)


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