ーSelf-as-Weと3つの「ゆ」から考えるー

ウェルビーイング共創社会のつくりかた

2023.12.1 /QUINTBRIDGE(大阪府大阪市)およびオンライン

多彩な人々の交流と共創を支えるNTT西日本のオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」において、ウェルビーイングの有識者が集まるトークセッションが開催されました。その模様をお伝えします。

セッション1「Self-as-We×QUINTBRIDGE」では、まず、会場となったQUINTBRIDGEの概況についてNTT西日本の浦狩亜紀氏から報告がありました。2022年3月にオープンしたこの施設は現在まで累計12万人が利用、共創パートナー(法人会員)は1100組織に上ります。その後、同施設の理念「Self-as-We」の概念とその応用可能性について、提唱者の京都大学教授、哲学者の出口康夫氏から解説がありました。「I」ではなく「WE」から行為を捉える視点を導入することで、これまでの企業活動で見逃されていた問題を発見し、改善していける点に触れ、Self-as-Weの特性や場の状態を測定する尺度についても紹介されました。

セッション2の「ウェルビーイングのつくりかた」では、早稲田大学教授のドミニク・チェン氏と本誌の渡邊淳司から、2023年9月発売の同名の書籍にある3つの「ゆ」の理論(Vol.48参照)が紹介されました。人や対象の変化を前提とする「ゆらぎ」、関係性から自律性を捉える「ゆだね」、プロセスに価値を置く「ゆとり」を意識することで、「わたしたちのウェルビーイング」が実現されるという話がなされました。

セッション3「AI親友論」では、出口氏の同名の著書をテーマに、チェン氏と共にAIやロボット、人間以外の生命種とのよい「WE」のあり方についての対話がなされました。チェン氏は、人間以外とのよい「WE」の例として、糠床内の微生物とコミュニケーションする「Nukabotヌカボット」を紹介。出口氏は、主体は行為を一人では完遂できず、常にリスクにさらされているという点から「共冒険者」という考え方を提示しました。AIやロボットを「共冒険者」とすると、人間はそれらを理由なく捨てる権利を持たないとしました。

最後のセッション「ウェルビーイングとビジネスの未来」では、NTT西日本の市橋直樹氏がモデレーターとなり、ウェルビーイングをどのようにビジネスに埋め込み、評価できるのか、議論がなされました。渡邊からは、人口減少期は所属する人々の状態や、チームの関係性、その持続可能性まで含めて見ていく必要があるという意見がありました。チェン氏は、ウェルビーイングを数値目標化する危険性や、コミュニケーションの重要性を指摘し、企業でウェルビーイングを測ることは、測られる側のことも考慮し慎重に行うべきだと述べました。

出口氏は、ウェルビーイングは状態ではなく、共冒険的な行為がうまくいくことだと述べ、同時に中心の取り合いをやめることはビジネスでも起こり得るし、それを積極的に評価する必要があるのではないかと。最後に市橋氏は「QUINTBRIDGEは、価値と同時に、文化を作ることでウェルビーイングを社会的に実現していきたい」と述べました。ビジネスとウェルビーイングの新しい関わりが見える充実したイベントとなりました。


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