2051年をSFプロトタイピング④
30年後の『ふるえ』
特集記事で未来予想
プロトタイピング協力:矢代真也(SYYS LLC)
『ふるえ』が30年後にも発行されていたら、どんな記事が生まれるのか、SFプロトタイピングで未来を予想する本コーナー。第4回目のテーマは、自律・他律、センシングです。テクノロジーと人の関係が変わりつつありますが、さらに先には何が待っているのか、記事の予告風にSFプロトタイピングしてみました。
※この記事はフィクションであり、登場する製品などは架空のものです。
「自律的に行う他律的なトレーニング」 2051年9月発行 Vol.216より
装着すれば、普段どおりの生活をしながら本格的な筋力トレーニングに相当する効果が得られるウエア「ステルス・トレーナー」が話題だ。従来の健康グッズのレベルとは異なり、トレーニングをまったく意識しないまま筋力増強できる装置で、プロアスリートにも愛用者が増えている。全身を覆うスーツを装着するとセンサが脳波と体の動きを検出し、無数の端子から特殊な電気信号を体に送ることで筋肉や内臓を刺激して、脳に意識させることなくトレーニング相当の負荷がかかる。しかし、使用中は自分の意識とは異なる動きをし続けることになり、逆に装着していない状態に違和感を覚えるユーザーも現れ始めた。体の自律的な動きと他律的な動きの混乱についてレポートする。
EMS(Electrical Muscle Stimulation)装置による腹筋ベルトなどが人気です。しかし、“ 動かされる”ことで増強された筋肉は、“ 体を鍛えた” 結果なのでしょうか。トレーニングが完全に他律的な運動となれば、そんな疑問も出てきそうです。(編集部)
「環境を可視化するセンシングツール」 2051年11月発行 Vol.217より
火星に人類が到達する時代でも、地球上では相変わらず、急に現れるゴキブリに驚かされたり、蚊に刺されたりという生活が続いている。さらには、生活空間の雑菌やカビなどを気にする人も増えている。プログラムが組み込まれた粉末状のセンシングツール「パウダー・センサ」は、生物の活動やその痕跡を検知して、微生物や細菌、昆虫など、指定した生物がどこに存在しているかを発光して可視化できるツール。これを使って生活空間のチェックをするサービスが話題となり、自分の周辺から害虫や雑菌を駆逐したい人々が利用している。しかし、そもそも人の生活領域には大量の常在菌が存在し、小さな昆虫も潜んでいるため、ショッキングな光景が広がる結果に……。利用者の声を聞いてみた。
人は昆虫や細菌と共に暮らしています。そんな中で、害虫/益虫といった区分は人間側の一方的な基準です。生活の中でそんな余裕は持てないかもしれませんが、環境センシングで実態が可視化されると、意識も変わるかもしれません。(編集部)
「海底を旅し続けるセンサたちの発見」 2052年1月発行 Vol.218より
海底に眠る資源の調査や地震をはじめとする災害対策としての海溝の調査など、海底調査のニーズはより重要度を増している。以前は船舶や海中ロボット、固定されたセンサを使って限定的な海域を調査していたが、AIによる自律型水中ドローンが本格運用され始めた。数百種類のマイクロセンサを搭載した数千台の水中ドローンが海中に潜り、潜水と浮上を繰り返しながら自律航行で海中の調査を続けている。その結果、これまで広範な調査が行われていなかった海域では、次々と新しい海洋生物やレアメタルが発見されている。大規模なセンシングによって見えてきた、新しい地球の姿を紹介する。
深海は、実は月や火星よりもたどり着くのが難しいと言われる未知の領域です。環境に影響を与えることなく自律航行し続ける水中ドローンが登場すれば、いまだ謎に包まれた海底の姿を明らかにすることもできるのではないでしょうか。(編集部)