2052年をSFプロトタイピング⑪

30年後の『ふるえ』
特集記事で未来予想

プロトタイピング協力:矢代真也(SYYS LLC)

『ふるえ』が30年後にも発行されていたら、どんな記事が生まれるのか、SFプロトタイピングで未来を予想する本コーナー。第11回のテーマは「デジタルプライバシーとセキュリティ」です。加速度的にデジタル化が進んだ未来において、デジタルを介したプライバシーやセキュリティの問題はどのような広がりを見せるのか。記事の予告風にSFプロトタイピングしてみます。
※この記事はフィクションであり、登場する製品などは架空のものです。

「夢が侵害するプライバシー」  2052年11月発行 Vol.223より

人が無意識に見る夢。内容は突拍子もないものだったり、リアルだったりとさまざまだ。装着して眠ることで夢を記録できる「ドリームレコーダー」が市販されてから、夢動画は一大コンテンツとして市民権を得た。そして夢動画を販売できるサービス「ドリーム・データベース」が登場すると、「寝ているだけでお金が儲かる」「想像できないような展開の動画が観られる」と人々が押しかけた。特に有名人の夢は高価で取り引きされている。一方で、登場する人物が知り合いや著名人に酷似していたり、プライベートな内容だったりするケースも多く、肖像権やプライバシーを巡って議論を生んでいる。あなたの夢は、誰のものなのか。デジタル化された無意識の映像の権利について、専門家に話を聞いた。

権利を保障する法律の多くは「個人が持つ理性的な意識」をよりどころとしています。もしその枠からはみ出した“ 無意識” がデジタル化されるようになったら、その権利や、そこで発生したプライバシーの問題はどう管理されるべきなのでしょうか。(編集部)

「発掘された『秘密の質問』たち」  2053年1月発行 Vol.224より

「初めて飼ったペットの名前は?」── 情報考古学者が昨年、20世紀のインターネット・アーカイブの断片から、かつてセキュリティ認証のために使われていた質問とその回答を大量に発掘し、話題となった。これらは、認証の精度を上げるために利用されていた「自分しか知らない情報」だ。生体認証を複数組み合わせることが常識の現代の人々からは、「これでセキュリティが守れると思った理由が分からない」などの声が聞かれる。ただ一方で、顔や歯、指紋などの生体認証データが流出してしまった結果、認証の正確性を担保するために身体を改造する人も少なくない。自分を証明するために自分を変更するのが本当に正しいのか。今でも「パスワード」と呼ばれる秘密の文字列を認証に利用する人々に意見を聞いた。

スマホでは常識となった生体認証はさらに広がり、「秘密の質問」は過去のものとなりつつあります。ただ、身体をアイデンティティの証明にさし出す仕組みは完璧なのでしょうか? 便利さと引き換えに行われる身体のデータ化はどこへ向かうのでしょう。(編集部)

「人を操るコンピューターウイルス」  2053年3月発行 Vol.225より

未知のコンピューターウイルス「XX」が発見された。感染すると端末を乗っ取り、モニターから特殊な周波数で点滅する光を発して人を催眠状態にする。その後に開いたウィンドウに本人が重要だと意識している情報を入力して送信してしまうという「催眠ウイルス」だ。重要だと思っている情報ほど入力してしまう特性からさまざまな被害が発生しているが、催眠中の記憶が残らないため発見が遅れ、被害が広がった。ある国では首相が感染していたことが分かり、何の情報が漏れたのかに注目が集まっている。頑強になったIT機器のウイルス対策の隙を突いた犯行に慌てふためく現場からレポートする。

フィッシング詐欺など、人をだまして情報を漏洩させる詐欺の被害は、ウイルス対策ソフトだけでは防げません。手段もより巧妙になり、予想外の方法でだまされる可能性もあります。ツールに頼るだけでなく、自ら情報を集めて対策することも大切です。(編集部)


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