Column:UXを巡る旅 [第1回]プロトタイピング

サービス作りにおけるプロトタイピング

  私の研究プロジェクトでは、サービス作りに関する研究を行っていますが、ここでは効率的なサービス作りのために活用されているプロトタイピングについて紹介します。プロトタイプの語源は、ギリシャ語で「最初の」「第一の」を意味するprotosと、「類型」「型」を意味するtyposを組み合わせたもので、サービスプロトタイプとは「最初に作る粗いサービスの原型」と言えます。例えば、ソフトウェアであれば、大まかな動きを確認するための簡易なプログラムであったり、車であれば、クレイモデルと呼ばれる原寸大の粘土模型であったりします。
  サービスプロトタイプは何のために使うのでしょうか?そのひとつはサービスの価値の検証です。完成したスマホアプリや車を作るには多くの時間やお金がかかりますが、いきなり完成版を作っても、うまく動かなかったり、見た目の印象が想定と違ったら困りますよね?そのために事前に粗い原型を作って検証し、手早く失敗を重ねます。機能や見た目、それらを含めたサービス利用時の満足度などが想定通りか、というのが検証すべき項目になります。ユーザのどのような課題を解くべきなのか、ユーザにどういう価値を提供すれば満足してもらえるのか、どういう形で実現すれば価値がうまく伝わるのか、特に、作り手も見たことがない新しいサービスを生み出そうとするときは、この検証が効果的です。また、ほかにもサービスの理解を醸成する効用があります。プロジェクトメンバーと議論するときや予算獲得のためにステークホルダーに説明するときなど、言葉だけでなく何かしらの形で見せることで具体的に話を進めることができます。

紙とペンによるプロトタイピングの有効性

  では、みなさんがプロトタイピングをやってみようと思ったとき、何を準備すればいいのでしょうか? いろいろなやり方がありますが、一番簡単なのは紙とペンです。プログラムを組んだり、粘土で作ったりするよりも、紙の上に書いてしまうほうが時間もお金もかかりません。例えば、スマホアプリの画面を紙に書いて操作手順に問題がないかを確認する「ペーパープロトタイピング」という手法があります。そして、ペーパープロトタイプを使って、想定するユーザにヒアリングを行うだけでも、サービス検証としては効果的です。私たちの研究プロジェクトでは、研究成果のひとつとして、ペーパープロトタイプを使ってヒアリングを行うための下図のようなガイドブック『Co-Creation Method』を提供しています。ご興味のある方は、idec-ml@hco.ntt.co.jpまでメールでご連絡ください。
木村 篤信
木村 篤信
NTT サービスエボリューション研究所

主任研究員、Design Innovation Consortiumフェロー、博士(工学)。HCI、CSCW、UXDesign、Living Labの研究開発に従事し、サラリーマンや住民がデザインを活用する世界を目指す。

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