New Haptic Technology 新たなコミュニケーションの場を生み出す「+3人称電話」
2018年にICCで開催された特別展「“感じる”インフラストラクチャー」に展示された作品「+3人称電話」について、開発に携わったお二人に話を聞きました。

自分と通話相手の姿を客観視できる電話

—「+3人称電話」とはどんな作品ですか?

山下:モニターが搭載されている2台の電話を離れた場所に設置します。モニターには自分と通話相手の全身の姿がリアルタイムで表示され、会話の場を第三者目線で見ながら会話をするという不思議な体験ができます。
柿沼:NTTの研究所で開発された、スポーツやライブの臨場感をまるごと伝送する超高臨場感通信技術「Kirari!」を応用した体験型展示になっています。

—第三者視点のリアルタイム映像は、どのようにして作り出しているのでしょうか?

柿沼:私が担当している任意背景被写体抽出技術を使っています。「Kirari!」では、スポーツ選手やパフォーマーを現場映像からリアルタイムに切り出して、遠隔地で空間を再現するケースが多いのですが、「+3人称電話」では通話している一般の来場者を別々の映像から同時に切り出して、各々の目の前の空間に合成した2人を表示するという使い方をしています。
  特に今回の展示では、来場者の服装や動きがわからないため難易度が高かったのですが、事前に多くの色のパターンや立ち位置を予想して学習させておくことで対応しました。

思わず身体的な動きが発生する通話体験

—作品の狙いはどんなところにあったのでしょうか?

山下:電話は通常、自分がどう話していて相手がどう反応しているのかが、視覚的にわかりません。そのため、例えば相手を傷つけるような発言をしてしまうこともあると思います。「+3人称電話」では、通話している2人の姿を客観的に見ることになります。その影響が、コミュニケーションの質に変化を与えるのではないかと考えたんです。

—試してみた人の反応はどうでしたか?

柿沼:不思議な感覚だという人が多かったようですね。自分の顔が見えるビデオチャットは一般的になってきましたが、自分の姿は基本的には正面の顔です。しかし「+3人称電話」の場合、カメラが横にあるので視点も横からです。自分が電話で話している姿をリアルタイムで横から見るという状態は、あまり経験しないですよね。
山下:バーチャル空間にいるようだという人もいました。相手と2人で、特別な空間にテレポートしているような感覚です。あと身体性を伴った通話になることが多かった点も興味深いです。映像の中では、例えば、相手と擬似的に手をつないだり、身体的なコミュニケーションができます。コミュニケーションの質が変化したというより、むしろ新しいコミュニケーションが生まれていると感じました。

—今後の展開について、どのように考えていますか?

柿沼:アートスペースだけではなく、街中の電話ボックスのような環境で行ったらどうなるのか、どんなコミュニケーションになるのかは気になるところです。私が担当の画像処理の部分は格段に難しくなると思いますが。
山下:個人的には、身体性を伴うという点に着目すると、例えば、離れた場所をつないで演劇を上演するといった展開も面白そうだと思いました。


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