「公衆触覚伝話」を体験
音声と映像での通話は今や一般的。それによってさまざまなコミュニケーションの形が生まれました。「公衆触覚伝話」は、それに振動を加えることでどんな新しいことが生まれるのかを検証するための、新しいプラットフォームです。
「公衆触覚伝話」を体験

企 画:渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所、NTT サービスエボリューション研究所)/ 林阿希子(NTT サービスエボリューション研究所)
制作協力:大脇理智/石川琢也(山口情報芸術センター)
南澤孝太/早川裕彦(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)
田中由浩(名古屋工業大学)

相手からの触感が伝わる
公衆端末があったら

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で開催中のリサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC 拡張展示「コミュニケーションの再考」で展示されている「公衆触覚伝話」は、従来の音声(聴覚)と映像(視覚)のビデオ通話に振動(触覚)を加え、新たなコミュニケーションのあり方を探る実験装置です。 

装置の前に座ると、正面から手元まで伸びた湾曲したアクリルのスクリーンがあり、カメラで撮影された相手の姿が映し出されます。スクリーンの手元の部分に、何かを置いたり、鉛筆で文字を書いたりすると、その触感が相手のスクリーンの手元部分に振動として伝わります。例えば、手元でローラーをゴロゴロと転がすと(写真)、その様子はリアルタイムに、映像として相手に伝わるだけでなく、ゴロゴロとした触感も振動として同時に伝わるのです。まるで相手が目の前にいて、それを触覚的にも感じることができる体験は、「相手が近くにいる」感覚を伝送するものと言えるでしょう。

振動の伝送は、手元スクリーンの裏に装着されたセンサーと振動子によって行われます(図)。構造としてはシンプルに見えますが、ハウリングを起こさない仕組みや、振動子ひとつで相手からの振動を空間的に感じさせる構造など、さまざまなノウハウが込められています。

公衆触覚伝話には、新たな通信インフラとしての提案が込められています。自然な形で映像と音、振動が伝わる公衆端末が世に現れたとき、そこで起こるコミュニケーションはどのようなものになるのか、多くの人に試してもらいたい装置です。なお、展示期間中には、東京のICCの端末と山口の山口情報芸術センター[YCAM]の端末をつなげて、長距離での伝送実験も実施します。

「公衆触覚伝話」でのやり取りの様子。相手が手に持った回転部に突起の付いたローラーを装置の上で転がすと、その映像と同時に振動が伝わってくる。スクリーンが手元に向かって伸びてきていることで、相手と自分の空間の境目が曖昧になる不思議な感覚が起こる。

公衆触覚伝話の仕組み。カメラからの映像の伝送に加えて、手元の振動もセンサーで取得して伝送し、相手の装置の振動子で再現する。

リサーチ・コンプレックスNTT R&D
@ICC 拡張展示
「コミュニケーションの再考」
2019.11.12-12.15

ICCとNTTの研究所が連携して研究を進める「リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC」の展示を拡張し、「コミュニケーションの再考」をテーマに、「触覚通信の実験」のほか、「自分を認識する装置」「次世代のつながり体験装置」の3つのセクションでデモンストレーションを行います。