ブックレビュー7選

和田有史さんと木村 敦さんに、今回のテーマに合わせて「食」に関連した書籍を紹介していただきました。

和田有史さんオススメ

『魯山人の食卓』

北大路魯山人 著/角川春樹事務所(2004)

芸術家であり、美食家としても有名な北大路魯山人のエッセイ集。自分自身の五感と文化に向き合う態度は真摯さすら感じる。自分の感覚を心から信じ、食材や料理に最大限の賛辞を贈ると共に、それを読者にもごり押しするかのような傲慢さが同居していてとても楽しい。嗜好としての食の探求の極みを覗き見ることができるようでワクワクする。
和田有史さんオススメ

『食行動の科学「食べる」を読み解く』

今田純雄、和田有史 編/朝倉書店(2017)

食行動の科学について、わが国の中心的な研究者たちが執筆した一冊。文系の読者も理解しやすい内容となっている。この本の最大の魅力は珠玉のコラムたち。本音を吐露してもらえたところもあるし、慶應義塾大学の先生が母校近くの某ラーメン店とダイエットコントロールについて綴ったエッセイもくすりと笑える。
和田有史さんオススメ

『らーめん才遊記』

久部緑郎 原作、河合 単 画/小学館(2009-2014)

マンガ『ラーメン発見伝』の外伝的続編。グルメマンガというと、ただただおいしさを追求するようなものが多い一方で、この作品ではラーメン屋の経営や、店主の生き方、文化としてのラーメンなども含めて、ラーメン屋という商売の全体像が、フードコンサルタントからの視点を通して生き生きと描かれている。ラーメン好きは必読かも。
木村 敦さんオススメ

『食べる 食べたくなる心のしくみ』

日本行動科学学会 編、青山謙二郎 著 / 二瓶社(2009)

食行動研究の概説が、わずか60ページのブックレットにまとめられている。各トピックの実験研究について手続きまで丁寧に説明されており、実験風景の写真も載っていたり、実験研究の重要性が説かれていたりと、食の研究に興味を持ち始めた学生の指導に最適な一冊。
木村 敦さんオススメ

『豊かな人生を引き寄せる「 あ、これ美味しい!」の言い換え力』

福島宙輝 著/三才ブックス(2018)

記号論を専門とする気鋭の若手研究者による「味を言語化する方法」の指南書。食に関する認知科学的研究の紹介も交えつつ、食体験を言語的に表現する方法が解説されている。食への関心を高めるには、自分自身の「食体験」を見直すこと(何を食べるかではなく、日々食べているものにどれだけ注意を向けるか)が重要と、あらためて気づかせてくれる。
編集部オススメ

『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』

ジャック・アタリ 著、林 昌宏 訳/プレジデント社(2020)

食の歴史と食の未来について著者の思弁を含め書かれている。食の本質について、以下の言葉が印象的なので引用する。「食は、人生と自然を分かち合う一つの方法であり、体と心を最善の状態にするための手段であり、自然との触れ合いを見直し、これを失わないようにするための貴重な機会なのだ。」
編集部オススメ

『フードテック革命 世界700兆円の新産業「 食」の進化と再定義』

田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明秀 著、外村 仁 監修/日経BP(2020)

生産から外食、調理、流通、販売と、世界で同時多発的に起こっているフードビジネス×テクノロジーの状況のレポート。徹底的な取材によって集められた現場の声がギッシリと詰まっており、最前線の凄みが伝わってくる。すでに見え始めている食の未来に向け、心構えができる一冊。

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