遊びの中で育まれるウェルビーイングリテラシー

相手のウェルビーイングを想像しながら祝うカードゲーム

2022年12月9日/世田谷区立尾山台中学校
子どもたちが自分や他者のウェルビーイングに気付き、理解し、それに基づいて行動できるスキルを育むカードゲーム「Super Happy Birthday」が、世田谷区立尾山台中学校(ウェルビーイングの視点から「特別の教科 道徳」の学びを拓く 参照)の1年生に対して実施されました。同校は学校経営計画にウェルビーイングを取り入れており、このゲームはその一環として実施されたものです。ゲームの内容と生徒の反応を紹介します。

子どものウェルビーイングを実現するためには、その子ども自身が考えて行動するだけでなく、周囲の子どもとの価値観の相互理解や、親や先生だけでなく、多様な大人との関わりが重要です。その際、年齢や性別によらず自身の価値観について話し合える場が必要となりますが、誰もが参加できるゲームは、その場を作り出す一つのツールと言えます。東京都市大学の坂倉杏介准教授は、渡邊淳司 本誌編集長と早稲田大学ドミニク・チェン教授が監修した『わたしたちのウェルビーイングつくりあうために』(2020年・BNN 新社)に執筆者としても参画しており、そこでの成果をもとに坂倉准教授らが中心となって「Super Happy Birthday」というカードゲームを開発しました。

このカードゲームは3~5人でプレーします。1人が誕生日会の主役で、主役は「わたしたちのウェルビーイングカード」(ウェルビーイングの視点から「特別の教科 道徳」の学びを拓く 参照)から、自身のウェルビーイング要因が書かれたカードを3枚選び、そのカードを伏せます。ただし、カードの裏面にはI / WE / SOCIETY / UNIVERSEのカテゴリーが書かれており、選ばれた要因をある程度推測することができます。残りの参加者は、それを手がかりに、主役のウェルビーイングが満たされるような誕生日会プランを考案し、発表し合います。プランを決める際には、「アイテムカード」と呼ばれるさまざまなイベントや道具を使う必要があります。例えば、主役がWEを3枚選んだとしたら、「たくさんの友達や推しのアイドルを招待して関係づくりをし、両親に感謝の意を伝えられるような会にする」などのプランが考えられます。

主役が複数のプランからどれを選びそうか議論しながら、主役のウェルビーイングに具体的に迫っていきます。主役がどれを選ぶのか、どのプランが選ばれるのかということが重要なのではなく、ゲームを通して、自分との違いを感じながらも、相手のウェルビーイングを考慮し、具体的な場面を作り上げようとする過程を体験することが狙いとなっています。

「Super Happy Birthday」を体験した生徒からは「私が大切にしている価値感が、周りの人にとってはそんなことなかったり、逆もあったり。それぞれが大切にしている価値感があることに気付きました」「メンバーのことを知る機会になり、仲が深まった」といった感想が出ていました。また、この日は担任の先生もゲームに加わり、大人も含めてウェルビーイングについて、考えることができたようです。

当日のグループワークの様子
当日のグループワークの様子
当日のグループワークの様子

当日のグループワークの様子。体育館でグループに分かれて実施されました。友達の新たな一面を知る機会になったという声も。


Copyright © NTT