たとえて説明する
日常生活で生じる、「これ何だろう?」「それってどの程度?」といった、些細な「?」に対するわかりやすい説明方法として「たとえ表現」があります[*1]。そして「たとえ表現」を自動生成する方法として、個々人向けにパーソナライズした表現をつくり出すライフログベースの方法と、万人向けの身体に関連 する表現を利用する方法が考えられます。どちらも自分自身で経験したもの、経験できるものに置き換えてみることで、違う世界のものを自分事として実感できるという点がアプローチの主軸です。個人向けと万人向けのたとえ表現
親しい人同士の会話では、聞いている人の知識や経験に即した具体例を用いて説明することがあります。そのような個々人にカスタマイズした説明を、ライフログを用いることで、例えば、外国で見かけた謎の食べ物を「( その人がよくコンビニで買う)焼きプリンに似た味」、背景の異なる他人の経験(オリンピック選手の練習量)を「あなたの体育祭前1週間分の練習を1日で行い、それを毎日行うようなもの」のような説明を自動生成することができます。なじみのない事象を自分自身が実際に経験したことに重ね合わせて、事象そのものの理解を促進したり、“ 練習の大変さ” のような事象に付随する感覚も効果的に伝えたりすることができます。個人に特化するだけでなく、国などの属性に応じて異なる表現を提示することで、訪日外国人向けに日本の珍しい食べ物などを、自国の同等の食べ物に言い換えて補足説明するといったサービスにも活用できます[*2]。わかりやすい「たとえ表現」の一例として、土地の広さを東京ドーム〇個分と表現することがあります。広いということは伝わりますが、実際の東京ドームの 広さをよく知らない人も多いのではないでしょうか。そこで、人間誰もがイメージしやすいたとえ表現として、人の身体を使った言い換えがあります。図(A)徒歩○ 分等の身体動作で表す時間や空間の表現、図(B)人間を基準とした視点変換など、誰もが持つ身体にまつわる数値を基準にすることで、異文化間、異分野間、異世代間を超えた万人共通のものさしを 作ることができます。
*1: https://www.milive-plus.net/gakumon16100201/
*2: http://www.ntt.co.jp/journal/1610/files/jn20161018.pdf
望月 理香
NTT サービスエボリューション研究所
研究主任、博士(工学)。色弱者向け配色変換技術、ライフログ処理、比喩等のことば表現変換技術の研究に従事。人間の感覚個人差のモデル化と相互理解支援を主なテーマとする。
研究主任、博士(工学)。色弱者向け配色変換技術、ライフログ処理、比喩等のことば表現変換技術の研究に従事。人間の感覚個人差のモデル化と相互理解支援を主なテーマとする。