ブックレビュー7選
稲見昌彦さんオススメ

『デモクラティア』

間瀬元朗/小学館(2013-2015)

集合知によって操作するヒューマノイドを描いた作品。人間と見分けが付かない“ヒトガタ”は、無作為に選ばれた3000人の匿名ユーザーによるネットを介した多数決によってその行動が決まる。「政治的に正しい」ロボットが世に放たれたとき、それは、どのように振る舞うことになるのか?
竹ノ内ひとみさんオススメ

『マージナル』

萩尾望都/小学館(1985-1987)

人類が生殖能力を失ってしまう2999年の地球で。「マザ」と呼ばれる唯一の女から生まれた男たちのミツバチ的社会を舞台に、壮大な「性」の物語が描かれる。地球は破滅に向かうのではなく生まれ直すのだというメッセージに、未来を希求する人類の「生」を放棄できない悲しみを感じる。
安藤英由樹さんオススメ

『ヨコハマ買い出し紀行』

芦奈野ひとし/講談社(1994-2006)

キラキラした未来ではなく、人類がゆっくりとたそがれていく未来では、もはやロボットであることもその人の個性だと割り切って共存している。インフラは老朽化して温暖化も進み、生活水準が現在より50年くらい前の状態に戻ってしまっているが、それでも今の世界よりも生きてみたい場所かもしれないと思ってしまう。
宮本道人さんオススメ

『預言者ピッピ』

地下沢中也/イースト・プレス(1999-)

地震予知のために作られたロボット「ピッピ」は、ある事件をきっかけに万能の未来予知能力を得る。予言を次々に成功させるピッピを前に、人類は未来を予測されることの意味と正面から向き合うことになる。未来予測により未来が変わるという、一筋縄ではいかない現象を奇妙なテイストで描いた未完の異色作。
矢代真也さんオススメ

『銀平飯科帳』

地下沢中也/イースト・プレス(1999-)

居酒屋の店主が江戸時代にタイムスリップする話だが、現代知識無双ものではない。こしょう飯、タコのからすみ、炒り酒で食べる刺身……。江戸の食べ物は、現代に勝るとも劣らずおいしそうだ。今の常識に囚われない料理の数々は、未来を考えるための示唆をくれる。いつの時代もうまいものはうまい。つまり人間は人間なのだ。
森尾貴広さんオススメ

『ぽんこつポン子』

矢寺圭太/小学館(2019-)

妻を亡くした老人吉岡のところにやってきた、型落ちのポンコツメイドロボットポン子の、どこにでもある地方の海辺の街を舞台にした日常系SF(?)コメディ。未来は都会や若者やハイテクだけのものではなく、地方、老人、旧いテクノロジーにも平等に訪れる。リアルな未来とは、案外本作の世界の様なものだったりするのでは?
編集部オススメ

『ORIGIN』

Boichi /講談社(2016-2019)

2048年の東京。主人公であるオリジンは、自らがロボットであることを隠しながら、凶悪犯罪を犯す自分の兄弟ロボット達を探して破壊していく。ハードボイルドな展開の中、開発者である父が残した「ちゃんと生きろ」という言葉に従い、会社員として勤め、人間らしい行動をロジカルに考えて目指す姿に、不思議な人間らしさを感じる。

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