2052年をSFプロトタイピング⑧

30年後の『ふるえ』
特集記事で未来予想

プロトタイピング協力:矢代真也(SYYS LLC)

『ふるえ』が30年後にも発行されていたら、どんな記事が生まれるのか、SFプロトタイピングで未来を予想する本コーナー。第8回のテーマは「コミュニティとウェルビーイング」です。どうすればコミュニティのウェルビーイングは向上するのか、記事の予告風にSFプロトタイピングして、未来の姿を探ってみました。
※この記事はフィクションであり、登場する製品などは架空のものです。

「AIアバターに集まる学びのコミュニティ」 2052年5月発行 Vol.220より

これまでコミュニケーションできるAIの生成には膨大なデータが必要だったが、今ではわずかな手がかりを元に人格形成が可能なほどに進化した。それによって、歴史上の人物の発言や行動を元にしたAIアバターが多数生まれている。坂本竜馬に幕末の話を聞いたり、逆に今の世界情勢を説明してアドバイスをもらったり、そこに集まる人々は時間を超えたコミュニケーションを楽しんでいる。また、こういったコミュニティはAIにとっても学びがある。コミュニティに集まる歴史専門家やファンとの会話の中で、参加者だけでなくAIも学習し、より深い問いにも答えられるようになっていく。コミュニティ内の会話の盛り上がりそのものがAIの成長にもつながるという、新しい形のコミュニティが生まれている。

アバターが中心となったファンコミュニティはすでに存在していますが、なじみのある歴史上の人物が一定のリアリティを持ってAIアバターとなり、意思を持ってコミュニケーションできたとしたら、新しい学びの形が生まれそうです。(編集部)

「ウェルビーイング・ソムリエに聞く幸せの測り方」 2052年7月発行 Vol.221より

家庭などの小さなコミュニティから、何万人もの人が参加するバーチャルコミュニティまで、その場のコミュニティ・ウェルビーイングを見極めてアドバイスをする「ウェルビーイング・ソムリエ」が注目されている。実際にコミュニティに加わり、規模や種類に合わせて適確、かつ簡潔な目標を提示して参加者やコミュニティのウェルビーイングを向上させてくれる。標語であったり、めざすべき指標であったりとアドバイスの種類はさまざまだが、コミュニティの中で質問をしながら対話を重ねることで答えを導き出すという。その職人技とも言えるコンサルティングに同行した。

コミュニティ・ウェルビーイングを向上させるために人それぞれのウェルビーイングを見極めようとすると、機械ではどうしても数値化できない部分が出てきます。そこにアプローチできるのは、実践と経験で得られる職人技のようなコミュニケーションスキルなのかもしれません。(編集部)

「相手になりきって実現する究極の“わたしたち”」2052年9月発行 Vol.222より

地域コミュニティや企業で、人々が一体となり一緒に何かを成し遂げる際、全員が不満を持たずに実行するのは難しい。しかし、相手の立場がより深く理解できれば、“わたしたち”として行動することで、お互いの不満を削減できる。「アイデンティティ・シェアリング」は、そんな目的で生まれた、疑似的に相手の立場を共有できるシステム。ある人の五感情報を記録し、バーチャル空間で相手になりきった状態で一定期間を過ごし、「この人はこんな感覚、立場で生きているのか」と実感できる。体験後はその記憶は残らないが、身体的、心理的な共感は残るという。利用前後を比較した体験談を報告する。

コミュニティ・ウェルビーイングの指標のうち「間主観的指標」(コミュニティにとってのウェルビーイング指標 参照)は、自分の周りにいる人たちがどのように感じているかを評価するものです。心理的にも身体的にも相手になりきる方法があれば、その評価の精度がグッと上がりそうです。(編集部)


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