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触感コンテンツ+ウェルビーイング専門誌 ふるえ Vol.40
Season 7 Social Well-being and Haptics
社会としてのウェルビーイングを考える

社会としてのウェルビーイングを考える

2015年創刊の『ふるえ』は7年目を迎えました。今年度はテーマを「Social Well-being and Haptics」とし、触れる感覚と共に社会の中でのウェルビーイングの実現について探求していきます。今号では、地域社会やコミュニティにおける社会としてのウェルビーイングのあり方について理論と実践の両方から取り組んでいる福井県立大学の高野 翔さんと、NTT社会情報研究所でその指標について研究されている赤堀 渉さんにお話を伺いました。

2022年3月18日に「World Happiness Report 2022」が公開されました。その中には、個人の主観的幸福に関する国の幸福度ランキングも掲載されています。「人生に全般的にどの程度満足しているか」という質問に対して0点(最悪)から10点(最良)で回答された点数をそれぞれの国で平均し、世界の国々がスコアの高い順に並べられています。1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がアイスランドで、日本は54位でした。この順位自体に一喜一憂すべきではありませんが、その国の状態の毎年の変化を把握し、どのような施策を実施すべきかの論拠となる重要な統計データです。

一方で、幸福度ランキングを見るだけでは、「個人としてのウェルビーイング」を実現することはできません。それぞれの人がどんなときに満足を感じるのか? その条件は人それぞれであり、個人ごとの違いまで含めて把握する必要があります。ここまで述べた、個人はマイクロなレベル、統計はマクロなレベルでのウェルビーイングの把握ですが、私たちの日常の多くは「個人と集団が相互に影響を与え合いながら活動する状況」(マイクロ・マクロダイナミクス)です。例えば、会社で同僚と仕事をするときや、チームスポーツでメンバーと共に試合に勝とうとする場面。こんなときには、誰かの満足な状態が別の人の不満につながったり、個人のやりたいことだけをすると全体としてうまく機能しなかったり、自分と他人、個人と全体のバランスを考える必要があります。

この「社会としてのウェルビーイング」は、多様な価値観を持つ他者と共に、それぞれのウェルビーイングに基づく持続的な対話を行い、構成員が目標を共創し、役割を自ら設定・更新するものです。これは、VUCAな世界(先行きが不透明で、将来の予測が困難な世界)でウェルビーイングを実現するには、欠くべからざる考え方といえるでしょう。本号では、特に「社会としてのウェルビーイング」の実現に向けて、どのように実践し、評価していくべきなのか、お二人へのインタビューを通して見ていきます。

(渡邊淳司・NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員/本誌編集長)

統計としてのウェルビーイング 個人としてのウェルビーイング 社会としてのウェルビーイング

個人としてのウェルビーイングは、個別の要因を知ることで個人個人のウェルビーイング向上に寄与するが、統計としてのウェルビーイングは全体傾向の把握と介入やサービスの方向性を決定する。また、社会としてのウェルビーイングは集団の調和と個人の自律のバランスを考慮する必要がある。

参考文献: 「World Happiness Report 2022



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