遠隔の人の身体感覚を体に巡らせる
触覚媒介者が記録した「バイブロスケープ」を体験
映像と音声に加えて動きによって生じる振動を記録
東京・新宿のNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]の展示エリア「触覚でつなぐウェルビーイング」では、NTTで開発している振動を伝送する装置を体験することができます。そのひとつとして、遠隔の記録者が撮影する映像と音声だけでなく、その人が体験した揺れや足元の細かな振動を記録、伝送する機材を利用することで「バイブロスケープ(触覚風景)」 を体験できる装置があります。風景の中にある世界の変化を、視覚、聴覚および、触覚を含めた多様な感覚で感じ取り、自分の体に巡らせる体験を提供するものです。
体験者は大型モニターの前に設置された踏み台の上に立ち、撮影者である触覚媒介者(バイブロスケーパー)が記録した体験を、映像と音声、踏み台に設置された振動子からの振動で追体験します。一人称の視点で記録されたコンテンツには、記録時に空を見上げたり、足元を見たり、さらには歩く速度を変えたりすることで、視点移動や移動方法など、触覚媒介者が何を感じて何を伝えたいのかといった意思が反映されます。そのため体験者は、触覚媒介者を通した身体感覚を体感し、触覚媒介者の視点を通して身体的な経験を含めた「世界へのまなざし」を振動で体に巡らせることになります。実際に体験した人からは、「思わず歩き出して、台から降りてしまった」といった感想も聞かれました。
バイブロスケープ体験装置の構成。記録した映像/音声/振動をバイブロスケープの装置で再生する。体験者は映像と音声と共に、足元の台に設置された振動子から、記録者の動きや揺れ、足元の細かな振動を感じ取る。
触覚媒介者( バイブロスケーパー)は2チャンネルのマイクを備えたカメラを持ち、自分の視点に合わせて向きなどを操作する。足元には2チャンネルの振動センサーが装着されており、動きや振動を同時に記録する。
「バイブロスケープ」企画・撮影・体験構成:駒﨑 掲(NTT社会情報研究所・コミュニケーション科学基礎研究所)
リサーチ・コンプレックス NTT R&D@ICC
触覚でつなぐウェルビーイングNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]2023.06.24‐2024.01.14
触れることによって人とつながり、そこから「わたしたちのウェルビーイング」をどうやってつくり出すのか、そのさまざまな試みを紹介する展示。「バイブロスケープ(触覚風景)」 のほか、「公衆触覚伝話」(ふるえ Vol.26参照)など、振動伝送の装置を体験できます。