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自著を語る

『〈わたし〉のウェルビーイングを支援するITサービスのつくりかた

-IT企業の実践とユースケースから

湯浅 晃・長谷川美夏・片岡紘平 著/渡邊淳司 監修(NTT出版・2024年)

湯浅 晃(株式会社NTTデータグループ)

わたし〉のウェルビーイングを支援するITサービスのつくりかた

個人のウェルビーイングとITサービスをつなぐ

世の中のITサービスは人々を幸せにしているのでしょうか? スマホ依存症や過度なゲーム課金など、さまざまな社会問題を見渡すと、世の中のサービスは、利便性や快楽を含むユーザーの「ニーズ」(欲望)を満たしてはいるものの、「ウェルビーイング」であるとは言い難いサービスもあるようです。サービス開発の現場で、「ニーズ」「バリュー」「ペイン/ゲイン」「ユーザーストーリー」などは耳にしますが、ウェルビーイングはまだほとんど聞きません。

また一方で、サービスの利用者(生活者)に目を向けると、欲求を満たす、自己管理・自己投資をするという考え方はあっても、「自身のウェルビーイングを追求する」という考え方は人々にまだ根付いていないように見えます。何が自分にとってのよいあり方・状態なのか、何となく感じていることを言語化し、行動できている人はまれです。つまり、生活者一人ひとりがウェルビーイングでありたいと考え、企業や政府がそのためのサービスを提供する、という世の中になっているかというと、まだそうなってはいないのでしょう。

このような状況で、私たちは企業という立場から、「生活者のウェルビーイングにつながるITサービスをつくろうとしたとき、個人のウェルビーイングをどう捉え、どう支援すればよいだろうか?」というストレートな問いを立てました。その取り組みの成果を凝縮した一冊が、この本です。

本書は、ウェルビーイングの定義や指標などの基礎的な考え方から始まりますが、オリジナリティの中心は「ウェルビーイングの支援モデル」と、「3つの技術的アプローチ」にあります。ウェルビーイングの支援モデルは、①ユーザー理解、②ウェルビーイング支援提案、③提案の効果測定という3つのプロセスから成るもので、支援提案においてはユーザーの状態に応じて持続支援、発見支援、回復支援の3つの支援アプローチが必要であることを示しています(図)。次に各プロセスを実現する3つの技術的アプローチについて、「個人的・機能的アプローチ」「相互的・対話的アプローチ」「集団的・共感的アプローチ」を提案し、さらに具体的な技術とユースケースを紹介しており、技術が個々のウェルビーイングにどう貢献できるかを具体的に示しています。

全体を通じて、本書はITサービスを通じたウェルビーイング向上のための実践的なガイドブックとなっています。具体的な実践例や技術的な詳細に加え、倫理的観点や社会的側面も包括的に網羅しているため、読者は自身のプロジェクトにおいて、人々のウェルビーイングを支援する具体的な方法を知ることができます。

ウェルビーイング支援提案3つの支援アプローチ

図 ウェルビーイングの支援モデル。その支援提案においては、持続支援、発見支援、回復支援の3つの支援アプローチある。

図 ウェルビーイングの支援モデル。その支援提案においては、持続支援、発見支援、回復支援の3つの支援アプローチがある。

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