Home / 「こころのはたらき」特別講義

「UNIVERSE」のウェルビーイングを学ぶ

「こころのはたらき」特別講義

2026.7.9・14/金沢工業大学

ウェルビーイングについて考える際、自分や身近な人との関係だけでなく、世界の人々、さらに動植物など人以外の生命との関わりへ視野を広げると、新たな気付きが生まれます。金沢工業大学で行われた特別講義では、戦争と国際社会、そしてサケやクマとの共生を題材に、「UNIVERSE」のウェルビーイングについて学生たちが考えました。


写真1 オンラインで講義する西尾 拡氏。

世界の人々や人以外の生命と「ともによく生きる」とは

ウェルビーイングの学びでは、自分や身近な人との関係について考える機会は多くあります。しかし、言語や文化の異なる「世界の人々」や、動植物といった「人以外の生命」まで視野を広げることは容易ではありません。

NTTと金沢工業大学の共同研究では、ウェルビーイングを実現するための資質/能力「ウェルビーイング・コンピテンシー」を提唱しており、その中で、自分や身近な他者を超え、多様な世界の人々や自然と関わる力を「UNIVERSE」のウェルビーイング・コンピテンシーとしています。金沢工業大学では、平 真由子准教授の担当科目「こころのはたらき」の一環として、UNIVERSEのウェルビーイングをテーマとした特別講義が行われました。

講義の前半では、「世界の人々」との関わりを軸に、戦争犯罪を研究する西尾 拡氏が、「日常化した戦争と私たちのウェルビーイング」というテーマでオンライン講義を行いました(写真1)。講義では、まず武力紛争で大きな被害を受けた市街地の地図サイトが示され、戦争で破壊された街に残るレストランの口コミが紹介されました。そこには料理の感想など、当たり前の日常が記されていました。しかし、その日常は戦争によって一瞬で失われてしまいます。西尾氏は「災害と違うのは、そこに人の(攻撃の)意思が存在すること」と語り、戦争の本質を問いかけました。さらに、世界各地で続く武力紛争や、世界中のサイバー攻撃をそれぞれ可視化するウェブサイトを紹介しました。講義時点で100件を超える武力紛争があり、戦争は遠い国だけの出来事ではなく、サイバー空間も含めて私たちの日常とつながっていることを示しました。

後半では、「人以外の生命」との関わりを軸に、渡邊淳司 本誌編集長が、東京大学とNTTによる「サステナブルウェルビーイング社会連携講座」の取り組みを紹介しました。この講座は人間・情報・自然の関係性をテーマとし、北海道の河川へ遡上するサケの映像記録や、産卵時にサケが川底を掘る振動を触覚デバイスで体験できるようにするなどの試みが行われています(写真2)。

ここで学生たちに投げかけられたのは、「サケのウェルビーイングとは何か」という問いかけでした。元の川へ戻ることができれば、サケは「よく生きた」と言えるのか。人間に食べられることはサケにとってウェルビーイングなのか。人間中心の視点では答えられない問いについて、学生たちは考えました。

続いて話題はサケからクマへ移り、3分間のグループ討議が行われました。平准教授は、言葉が通じない相手が何を大事にしているかは想像するしかないと述べた上で、クマも人間も同じ地球で暮らしているとして、学生たちに共生のあり方を問いかけました。学生からは、「餌場を確保する」「生息域を広げる」「人間が控えめになる」といった案が出されました。

最後に学生たちは、それぞれが考える「UNIVERSEのウェルビーイング」を一言でまとめ、グループで共有しました。平准教授は、授業を単にレポート課題で終わらせず、今後も学生とともに考え続けたいと述べ、講義を締めくくりました。

写真2

写真2 北海道で記録したサケの産卵の様子などが紹介された。遡上したサケは体をボロボロにしながら川底を掘って産卵し、その生涯を終える。

Copyright © NTT