ドローンからの映像が生み出す身体拡張
ドローンが猛スピードで空中を滑空する、ドローンレース。レーサーは、ドローンから送られる映像を頼りに操作します。その際に操縦者がまとう特有の身体感覚について、ドローンレーサーの高宮悠太郎さんに話を聞きました。
高宮 悠太郎
高宮 悠太郎

株式会社ORSO ドローン事業推進部ドローンレースパイロット兼エバンジェリストとしてドローンの可能性を模索中。慶應SFC時代、Wordl Drone prix in Dubalを初めとした国内海外多数のドローンレースに参戦。

レース中にFPVに集中すると自分の身体がドローンになる

—まずはドローンでレースに出場した経緯を教えてください。

高宮: ドローンとの出会いは大学の授業でした。OBといっしょに行うグループワークで、「ドローンを使ったビジネス創業」という内容だったのですが、メンターが、当時コロプラの千葉功太郎さんと、現在私が所属するORSO代表の坂本義親さんという、ドローンに精通している面々でした。2015年のことです。
  話題になり始めていたドローンでしたが、実際に触れると、じっくり操作してみないと理解できないということがわかりました。学生でお金もなかったので、マニュアルのジャイロセンサーしか入っていないような安価なドローンを購入しました。男子学生4人が集まって、ドローンのような動くものを触っていたら、自然に競争が始まるんですよ(笑)。「あの木を回って箱の上に着陸させる」みたいなシンプルなものですけど、これがレースの始まりでしたね。そのうちに、ドバイで開催される「World DronePrix in Dubai」が発表され、授業の最終発表で世界的なレースに参戦したことを多くの人に知ってもらおうと、挑戦しました。

—普通にドローンを飛ばしているときと、ドローンレースで飛ばしているときでは、感覚は違いますか?

高宮: 通常ではドローンを目視で飛ばすことが多いですが、レースではヘッドマウントディスプレイにドローンのカメラからの映像を表示させるFPV(First Person View)視点で飛ばすので、違いがあります。画面上にマップも表示されるようになっているのですが、視線のほとんどは映像に向けて、視界を頼りに定められたコースを通過します。高さを把握しておくことも重要で、コースは必ず下見をして、障害物の位置や高さなどを確認します。

—FPVで飛ばしているとき、身体感覚的にはドローンに乗って操縦しているという感じなのでしょうか?

高宮: 「乗っている」というよりは、「ドローンそのものになっている」感覚に近いと思います。物理的に存在しているドローンから見える映像が仮想空間として自分に表示されているので、もちろんゴーグルを付けた自分は存在してますが、実体がないような感覚です。機体のことはあまり意識せず、カメラからどんな映像が来ているか、どんな風に地面が写っているかという部分に、集中力を使っています。重力は感じていなくて、「飛んでる」というよりは「行きたいところに移動できる」という印象ですね。

—高宮さんはドローンについて「身体拡張」という言葉を使われていますが、それはどんなイメージなのでしょう?

高宮:ドローンをFPVで飛ばしているとき、操作に対して映像がリニアに反応するので、ほとんど反射神経で操作する状態になります。それは自分の意識自体が、アバターのような別のものに乗り移っている感覚です。しかもそれは、バーチャル世界ではなく、リアルの世界で実際に移動しているわけですから、その状況は身体の拡張なのではないかと思うのです。目だけを100m先に移動したり、2km先にものを運んだりできるわけで、ここまで広く身体を拡張できるものは他にないように思います。もっと形やサイズを変えて、例えば地下だったり、水道管だったり、あらゆる空間にアクセスできるようになれば、拡張された身体としていろんなことができそうですよね。人間が行ったことがない空間はたくさんあるわけで、ドローンが身体の拡張ツールとして、そういうところにアクセスできるツールになれば面白いと思います。

高宮さんの愛機、レース用のドローン。組み立て済みの市販品ではなく、フレームやモーター、ローター、基板など、カスタムパーツで構成されており、極限までチューニングとバランス取りを行う。





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