身体を通じて自分と世界をつなぐ「触覚のデザイン」が世界各地から集まった、今回のHAPTIC DESIGN AWARD。20カ国117作品の中から選ばれたのは?
「触れられる未来」を予感させる作品たち
「触覚のデザイン」の祭典「HAPTIC DESIGN AWARD 2017」の審査結果が発表されました。今回のHAPTIC DESIGN賞は、「YouFab Global Creative Awards 2017」の特別賞という位置付けになっていることもあり、世界20 カ国から117 作品の応募がありました。「触れる」という私たちにとって日常的な体験から広がる思いもよらないアイデアや、それを実際にデザインし新たな体験を生み出す技術。そんな未来への可能性を感じさせる作品の中から、HAPTIC DESIGN 賞を受賞した「The Third Thumb」と審査員の選定による3作品を紹介します。審査員
太刀川英輔 NOSIGNER 代表 /
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)特別招聘准教授
水口哲也 Enhance 創業者 & CEO /
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授
廣川玉枝 SOMA DESIGN クリエイティブディレクター/デザイナー
オーガナイザー
南澤孝太 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)准教授
<総評>
初めてのグローバルアワードへの挑戦でしたが、作品の完成度が高く、バリエーションも豊富でした。身体性そのものの拡張、デジタルを通した身体性の表現、肌触りの触感を極めるアプローチや触覚を通じたストーリーテリング。この4つだけでも大きなHAPTIC DESIGNのフィールドを描ける気がします。触覚のデザインを触れずに審査する難しさはありますが、いずれの作品も触感を鮮明にイメージすることができました。HAPTIC DESIGNは現段階は可能性を広げることに意義があり、その点においても素晴らしいアワードになったと思っています。
HAPTIC DESIGN賞
YouFab Global Creative Awards特別賞
The Third Thumb
YouFab Global Creative Awards特別賞
The Third Thumb
Dani Clode
UNITED KINGDOM
The Third Thumb は、3Dプリンターで作られた、足で操作する“拡張した親指”です。親指は人間特有のものであり、ユニークでダイナミックな動きをします。3Dプリントした柔軟に折り曲げできる「リビングヒンジ」を、2つのモーターが引っ張ることで自然な親指の動きを再現。足先に取り付けた2つの圧力センサーでコントロール、Bluetoothを介して親指と通信する仕組みです。車の運転やミシンの使用、ピアノの演奏など、手と足の間に存在する強いつながりを、より発展させる製品からインスピレーションを得ています。
<オーガナイザーコメント> HAPTICとは人が自分の身体を通じて世界を認識する感覚です。では、その身体そのものを拡張したら人の行動や人と世界との関わり方はどう変化するでしょうか。人が自在に身体を拡張できる未来を見据えて人の身体的経験のアップデートを図る。身体の本質に迫る HAPTIC DESIGNです。(南澤)
手に装着して身体を拡張する「第三の親指」
本作は「能力」の定義についての議論を引き起こすでしょう。「prosthetic」(義肢)の語源である「prosthesis」という語は「加える・乗せる」という意味を持ちます。「直す・交換する」のではなく、「追加・拡張する」ことなのです。本作はこの語源からヒントを得ており、人体増強への探求、身体の拡張として再定義へのチャレンジでもあります。コントローラーは足先に取り付けて親指を制御する
<オーガナイザーコメント> HAPTICとは人が自分の身体を通じて世界を認識する感覚です。では、その身体そのものを拡張したら人の行動や人と世界との関わり方はどう変化するでしょうか。人が自在に身体を拡張できる未来を見据えて人の身体的経験のアップデートを図る。身体の本質に迫る HAPTIC DESIGNです。(南澤)
太刀川英輔セレクト
福筆Fukufude
福筆Fukufude
南木隆助
JAPAN
日本を代表する書道筆「豊橋筆(とよはしふで)」の伝統的な技術を応用して作った、最高の洗い心地の洗顔用ブラシ。子どもの肌を繊細に洗うことができる。
●プロダクトデザイン/クリエーティブディレクション:南木隆助●筆製作/監修:川合福男中西由季●木軸開発/製作:青山和志●アートディレクション/パッケージ:前田彩●ネーミング:堀越富美子●キービジュアル撮影:小柴尊昭●モックアップ制作:堀田高大●プロデューサー:吉開仁紀●協力:後藤和也 神藤将弘 小野健太郎 三浦有喜
<審査員コメント> デジタル方向の提案が多く応募されている中で際立った、アナログで、かつ最も気持ちよさそうな提案。このデザインは、圧倒的触感による伝統産業への市場創造だ。かつて書道筆は化粧筆への技術の水平転用によって生き残った。あれから50年。伝統産業が減退する現代で、新しいマーケットをつかむきっかけになってほしい。(太刀川)
●プロダクトデザイン/クリエーティブディレクション:南木隆助●筆製作/監修:川合福男中西由季●木軸開発/製作:青山和志●アートディレクション/パッケージ:前田彩●ネーミング:堀越富美子●キービジュアル撮影:小柴尊昭●モックアップ制作:堀田高大●プロデューサー:吉開仁紀●協力:後藤和也 神藤将弘 小野健太郎 三浦有喜
<審査員コメント> デジタル方向の提案が多く応募されている中で際立った、アナログで、かつ最も気持ちよさそうな提案。このデザインは、圧倒的触感による伝統産業への市場創造だ。かつて書道筆は化粧筆への技術の水平転用によって生き残った。あれから50年。伝統産業が減退する現代で、新しいマーケットをつかむきっかけになってほしい。(太刀川)
水口哲也 セレクト
as·phyx·i·a
as·phyx·i·a
Maria Takeuchi & Frederico Phillips
UNITED STATES
3Dアーティストのフェデリコ・フィリップス、ミュージシャンのマリア・タケウチ(竹内真里亜)、ダンサーの田中志保のコラボレーションによる実験映像。一般的な商業上のあたりまえを超越するべく行った、異なるフィールド、異なる技術の新たな融合の方法を模索する実験でもある。
<審査員コメント> これは、触れることができる作品ではないし、触覚のフィードバックがある作品でもありません。しかし、本アワードの応募要項の中にある「触覚を喚起する」要素がふんだんに含まれています。この映像を見ていると、自分の中の触覚が刺激されて、不思議な気分になります。非常に共感覚的な映像作品だと思います。(水口)
<審査員コメント> これは、触れることができる作品ではないし、触覚のフィードバックがある作品でもありません。しかし、本アワードの応募要項の中にある「触覚を喚起する」要素がふんだんに含まれています。この映像を見ていると、自分の中の触覚が刺激されて、不思議な気分になります。非常に共感覚的な映像作品だと思います。(水口)
廣川玉枝 セレクト
いしのこえVoice of the stone
いしのこえVoice of the stone
MATHRAX
JAPAN
長い年月をかけて海岸にたどり着いたさまざまな石。その石にそっと触れると音を奏でる。「石の声を聴く」というネイティブアメリカンの知恵と技術をインスピレーションに、電子工作によって石と世界の接続を試みた作品。
<審査員コメント> 好きな石を拾って、その石から発する音を体験するということが面白いと思います。普段感じることのできない感覚を音に変換して捉えるという新たなコミュニケーションの方法は、人々の好奇心や新しい視点を刺激する良い場になるでしょう。インスタレーション展示の様子も素敵です。(廣川)
<審査員コメント> 好きな石を拾って、その石から発する音を体験するということが面白いと思います。普段感じることのできない感覚を音に変換して捉えるという新たなコミュニケーションの方法は、人々の好奇心や新しい視点を刺激する良い場になるでしょう。インスタレーション展示の様子も素敵です。(廣川)
YouFab2017受賞作品展示会2月9日(金)〜23日(金)
今回のアワードでコラボレーションしたYouFab Global Creative Awardsでは、受賞作品の展示を行います。
HAPTIC DESIGN賞「 The Third Thumb」の展示もお見逃しなく!
GOOD DESIGN Marunouchi
東京都千代田区丸の内3−4−1新国際ビル1F
GOOD DESIGN Marunouchi
東京都千代田区丸の内3−4−1新国際ビル1F
MEETUP SPECIAL 2月21日(水)19:00–21:00 FabCefe Tokyo
Meetupスペシャルと題し、AWARD受賞作品およびJUDGE'S SELECTEDの制作者を招いて作品の紹介や体験を行います。
また審査員の水口哲也さん、廣川玉枝さんと、オーガナイザー・南澤孝太とのクロストークも必見!
MEETUP SPECIAL2月21日(水)19:00–21:00 FabCefe Tokyo
参加費:1000円(ワンドリンク付き)
http://hapticdesign.org/event/haptic-design-meetup-special/
MEETUP SPECIAL2月21日(水)19:00–21:00 FabCefe Tokyo
参加費:1000円(ワンドリンク付き)
http://hapticdesign.org/event/haptic-design-meetup-special/