目を塞いだ状態で相手ゴールへ向けてボールを転がし点を取り合う競技、ゴールボール。今回はその体験会に参加した感想をまとめてみました。
ゴールボールってどんなスポーツ?
視覚障がい者がプレーする球技。18×9mのコートで、両端には高さ1.3m、幅9mのゴールが設置されている。12分ハーフの計24分を、1チーム3名の2チームで攻撃と守備とを交互に行う。攻撃側は鈴の入ったボールをゴールに向かって転がし、守備側は3人でそれを全身を使って止める。選手は「アイシェード」(目隠し用のゴーグル)を装着してプレーする。
ボールを転がして体で止めるというルールを聞くと、レクリエーションスポーツのような優しい世界を思い描く。ところが、このボールが思ったより大きく、硬い。サイズや手触りは男子用のバスケットボールと同等で、重さは1.25kgと約2倍。転がすといっても、特定のエリアで2バウンドさせればよいので、かなりの勢いで飛んでくる。これを見えない状態で止めるのだから、まさに体を張ることになる。防御しないと顔に当たることもあるし、当たれば痛い。そのため守備のときには、漠然とした恐怖が常にある。
体験会は、ボールの扱いから、目を閉じて投げる練習、転がってくるボールを受ける姿勢の練習と進むが、参加者は意外にそつなくこなす。しかし、アイシェードを装着した瞬間から世界が変わった。自分の意思で目を開けられる状態と、そうでない状態との間には大きなギャップがあるのだ。とにかく、自分がどちらを向いているのか自信がない。そのため、ゴールボールのコートには床のラインに紐が仕込んであり、そのわずかな突起を頼りに方向を定める。そして、チームメイトと声を掛け合い、位置関係を推し量る。
守備や投球の技術に目が行きがちだが、ゴールボールでは、自分の位置を素早く確認することが大切だ。向きがわからないと、投げることも守ることもできない。ボールを持ったら自分の位置を確認、投球したら守備に向けてすぐに確認と、床の紐に触れる動作の繰り返しになる。
その行為は競技に勝つためではあるが、目が見えない人にとって自分の位置が把握できるのはとても大切なことだと気付かされる。普段目にしている道路の点字ブロックも重要な手がかりのはずだ。加えて、チーム内の声掛けも重要な情報となる。実際の競技では晴眼者からのサポートはないが、練習中に周囲からの指示が聞こえるとグッと楽になることも実感する。
ゴールボールというパラスポーツ体験の中に、共生のためのあらためての気付きが数多くあった。
守備の練習をする様子。ボールの音を聞いて方向を定め、手足を伸ばして体を投げ出す。ボールが両手両足のすき間を抜けない幅を維持するのもコツだ。
試合中は、何度も床のラインを探ることになる。自分の位置と向きを確認し、守備や投球の準備をする。床を探っている間にゴールを決められてしまった。
味方同士の意思疎通も重要だ。声や音でサインを決めておかないと、パスなどのやり取りはもちろん、ボールを誰が持っているのかすらわからない。