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テクノロジー起点でウェルビーイングに資するサービスを創出する

──「いのちふれあう伝話」の事例

ここでは、大阪・関西万博で設置された、映像・音声に加えて振動を伝える「いのちふれあう伝話」を取り上げ、この技術に、ウェルビーイングの要因をかけ合わせることで、どのように新しい体験価値を生み出せるのか、アレンジ型のウェルビーイングサービス創出の思考実験を行います。

「いのちふれあう伝話」は、映像や音声で会話できるだけでなく、利用者が手元のテーブルをトントンとたたくと、その振動が離れた場所にいる相手のテーブルにも伝わる、新しい機能を持つコミュニケーション装置です(ふるえVol.58参照)。離れた場所にいる相手がまるですぐそばにいるかのような、これまでにないつながり感をつくり出します。大阪・関西万博では、NTTパビリオンといのち動的平衡館をこの装置で結び、会ったことのない人同士がリアルタイムで心を通わせる、公共の場での “ふれあい”を実現しました。

ウェルビーイングのサービスシナリオ

ここでは、「基本機能」に、ウェルビーイングの要因をかけ合わせることで、ウェルビーイングのサービスシナリオ(サービスが価値を生み出す筋書き)を考えます。具体的には、「I(わたし)/WE(身近な人々)/SOCIETY(社会)」の各カテゴリーのウェルビーイングの要因とかけ合わせます。この手法は、ほかの技術でウェルビーイングの価値創造を考える場合にも応用できるアプローチです。

いのちふれあう伝話+「I」(自分)

「いのちふれあう伝話」の技術で、自分の気持ちや行動に関する「I」のウェルビーイングの要因を実現するサービスを考えてみましょう。「I」は、自分に関する要因であるため、AIなどとのやり取りでも問題ありません。例えば、触覚体験に関連する「I」のウェルビーイングの要因には、以下が考えられます。

  • 自分の心身の状態を理解し、整える。
  • 直感的に注意を促し、行動意欲を引き出す。

例えば、人の姿を模した「バーチャルヒューマン」と言葉や身振り手振りだけでなく、触覚を通したやり取りも行い、自分の状態やコミュニケーションの特徴を分析できるサービスが考えられます。また、そのような分析だけでなく、心身が整うインストラクションをAIが振動を通して行うサービスも考えられるでしょう。さらに、「自分がこうなりたい」という行動意欲や行動自体を促すには、手に振動を与えるだけでなく、文字どおり背中を押してくれるような振動提示装置があってもよいでしょう。

触覚付きバーチャルヒューマン

サービスシナリオの例
「触覚付きバーチャルヒューマン」

AIによるバーチャルヒューマンとの会話の中で、自分の分析をしてくれる。仲のよい友人のように直接手に触れ、触覚を伴って勇気づけてくれたり、行動を促したりしてくれる。自分についての理解を深めながら、モチベーションの向上や、行動変容のきっかけ作りに貢献してくれるサービス。


いのちふれあう伝話+「WE」(身近な人々)

「いのちふれあう伝話」の技術で、身近な人との関わりに関する「WE」のウェルビーイングの要因を実現するサービスを考えてみましょう。触覚伝送を伴う体験が生み出す「WE」のウェルビーイングの要因としては、以下が挙げられます。

  • 相手の存在を、実感をもって感じられる。
  • 相手への信頼や親密感が醸成される。

人間関係の醸成において、行動を習慣化することは大切です。例えば、毎日「おはよう」と声をかけ合うという行動は、信頼や親密さを維持したり、高めたりします。さらに、そこにハグやハイタッチのような触覚が加わると、その行動の効果はより大きくなると考えられます。例えば、遠隔地で生活している家族と、ビデオチャットで声をかけ合うだけでなく、「おはよう」と声をかけながら、ポンポンと肩をたたき合えるような装置があれば、身近な人との関係性を維持、向上させることができるでしょう。

ふれあう“おはよう・おやすみ”デバイス

サービスシナリオの例
「ふれあう“おはよう・おやすみ”デバイス」

遠くで暮らす家族やパートナー同士が、近くにいるように声をかけ合い、お互いの手や肩に触れながらあいさつができる装置。あいさつに限らず、振動を含めて、励まし合ったり、お祝いをしたりする行為が、手軽に継続できる。


いのちふれあう伝話+「SOCIETY」(社会)

「いのちふれあう伝話」の技術で、地域や組織など、より広い社会に関わる「SOCIETY」のウェルビーイングの要因を実現することを考えます。触覚体験と関連のある「SOCIETY」のウェルビーイングの要因は、以下のようなものが考えられます。

  • 地域や組織などとの一体感を感じられる。
  • 集団の中で役割を果たしている感覚を得られる。

「SOCIETY」は、地域など不特定多数の人を含む集団の中で、何らかの役割を果たし、集団への帰属意識や一体感が向上することと関わりがあります。例えば、地元のお祭りに参加することは、遠隔地に住んでいるとなかなかできません。盆踊りで、遠隔から太鼓をたたいたり、鼓動の振動を送ることで祭りを盛り上げたり、周囲の手拍子や祭りばやし、人々の活気を、現場の空気の震えと共に感じられるサービスが考えられます。遠くにいても、地元の行事に参加した実感が得られるはずです。

ふるさとの祭り太鼓

サービスシナリオの例
「ふるさとの祭り太鼓」

地元で行われるさまざまなイベントに、身体感覚を伴ってバーチャルで参加できるサービス。デバイスを装着することで、祭り太鼓をたたいて手元に振動を感じながらリズムを送り、現場の参加者はそれに合わせて踊ったりすることができる。

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