Column:UXを巡る旅 [第2回]「食」とUXデザイン

優れたUXをデザインする

  ユーザに選ばれるサービスをつくるためにはどうしたらよいか? そのことを考える際の鍵となる概念が「UX(ユーザエクスペリエンス)」です。UXとは一般に、「人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザが得る体験」のことを意味します。ユーザに選ばれるサービスをつくるためには、優れたUX を提供する(デザインする)ことが重要になります。今回のコラムでは、「食」にまつわるサービスに例えながら、「優れたUX をデザインするとはどういうことか?」について述べたいと思います。

「食」にまつわるサービスからUXデザインを考える

  「食」にまつわるサービスの代表的なものは、レストランなどの飲食店サービスかと思います。さて、まずは飲食店(レストランでも居酒屋でも構いません)の利用風景を思い浮かべてみてください。提供者(飲食店)とユーザ(客、すなわちあなたです)の間には、どのような接点(タッチポイント)があるでしょうか?
  飲食店におけるタッチポイントの中核は「料理や飲み物」です。しかしながら、皆さんお分かりのように、飲食店の価値や印象を決定づけるのは、料理や飲み物だけではありません。テーブルやイスなどのインテリア、食器やカトラリー、壁面の絵画やBGM、スタッフの接客サービス、店主との会話など、多様なタッチポイントがあり、ユーザの体験はそれら全てから影響を受けます。すなわち、飲食店サービスのUXを向上させるためには、料理や飲み物をおいしくするだけではなく、ユーザとのタッチポイント全体を把握し、それらを注意深くデザインする必要があるのです。より一般的な言い方をすれば、ユーザとの様々なタッチポイントを「線」として捉え、その体験全体をデザインする、ということになります。このように考えると、飲食店利用前の予約の過程や、食事後の付帯サービス(例えば、連携店舗で特典が得られる)など、店舗利用時以外の要素もデザインの対象となるのです。

UXデザインを支援するガイドブック

  このことから分かるように、優れたUXをデザインすることは簡単ではありません。ユーザとのタッチポイントを把握する、サービス全体を通じた一貫性のある体験を作り込む、サービスをユーザの文脈でテストするなど、やらなければならないことはたくさんあります。そこで、我々の研究プロジェクトでは、優れたUXをデザインするためのやり方やツールを整理したガイドブック(Co-Creation Method)を開発しています。このガイドブックは、初心者の方でも実践しやすいよう、できるだけ平易な言葉でシンプルにまとめています。ご興味のある方はcocri-ml@hco.ntt.co.jp までご連絡ください。

赤坂 文弥
赤坂 文弥
NTT サービスエボリューション研究所

研究員、博士(工学)。設計学やサービス工学、システム思考の観点から、Service Design、Living Labの研究に従事。社会に役立つサービスをデザインするための方法論創出や実践知の抽出・表現を主なテーマとしている。

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