背景
私たちの日常生活では、絵画、イラスト、照明、音響、音楽など、何らかの目的に沿ってコミュニケーションや表現を行うために、光や音の構造が意図的に設計されており、このような技能は「ヴィジュアルデザイン」「サウンドデザイン」という形で広く認知されています。
一方で、触覚に関するデザインは、製品の触り心地や服の着心地、エンターテインメントにおける体感などさまざまな分野で試みられているものの、その体系化は行われておらず、分野間で共通言語を持ちません。そこで、私たちは、触覚に関するデザイン原理を体系化する「ハプティックデザイン」という分野を提唱します。
一方で、触覚に関するデザインは、製品の触り心地や服の着心地、エンターテインメントにおける体感などさまざまな分野で試みられているものの、その体系化は行われておらず、分野間で共通言語を持ちません。そこで、私たちは、触覚に関するデザイン原理を体系化する「ハプティックデザイン」という分野を提唱します。
触覚をデザインするということ
触覚(Haptic)とは、身体を通じて自己や外界を認識する感覚です。それは皮膚の接触を通じてモノの「質感」を感じる感覚であると同時に、自らの身体を動かして対象あるいは自己の存在を確かめる「実感」の感覚でもあります。さらには、そのような身体による直接の働きかけは、喜怒哀楽や対象への共感など「情感」とも深い関連があります。
すなわちハプティックデザインとは、この「質感」「実感」「情感」という触覚に特徴的な3つの側面を意識的に捉え、触り心地や情報伝達にとどまらず、人と外界との身体を通じた関係性をデザインすることなのです。
すなわちハプティックデザインとは、この「質感」「実感」「情感」という触覚に特徴的な3つの側面を意識的に捉え、触り心地や情報伝達にとどまらず、人と外界との身体を通じた関係性をデザインすることなのです。
触業= Haptic Designer
このような触覚を含む身体感覚のデザインを通じて、産業や社会、生活におけるさまざまな課題を解決する人々を、私たちは「ハプティックデザイナー(Haptic Designer)」と名付けます。そして、ハプティックデザイナーが持つべき考え方や技能を一つのデザイン原理として統合し、職能として位置付けることを目指します。
2016年10月1日
南澤孝太(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科/JST ACCEL 身体性メディアプロジェクト)
渡邊淳司(『ふるえ』編集長/NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
渡邊淳司(『ふるえ』編集長/NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
この宣言文は、前頁インタビューをきっかけに、本特集のために南澤先生と『ふるえ』編集長(渡邊)が、ハプティックデザインの基本概念を整理したものです。本宣言が、ハプティックデザインの社会への浸透を、少しでも促す力になれば幸いです。