触覚の質感には名前がない
ハプティックデザインにおいて、触覚の質感の関係性をわかりやすく、手軽に把握することは、重要な課題のひとつといえます。一般に、触覚の質感は、「粗さ感」「摩擦感」「凹凸感」「硬軟感」「温度感」の5つが主要な要素だといわれていますが、これらは、色の主要な要素である「明度」「彩度」「色相」に対応するものと考えられます。色のデザインでは、この三要素に基づき、色と色の関係性をわかりやすく表したもの(たとえば、下図の色相環)が数種類存在しますが、触覚では質感の関係性を表した一般的な分類図はありません。また、色を表す場合、「赤」や「青」といった色名を指定することで、他人と簡単に感覚を共有することができますが、触覚ではそのような質感を表す名称が存在していません。
オノマトペによる質感地図
感覚の分類や関係性を調べるひとつのやり方として、感覚を表す言葉の関係性を分析する方法があります。前述したとおり、触覚の質感を表す名称は存在しませんが、それに近いものはあります。「さらさら」「ねばねば」といった、触覚の質感を表すオノマトペです。オノマトペとは、擬音語・擬態語の総称で、特に触覚のオノマトペは種類が多いことが知られています。これまで、オノマトペを触覚の質感カテゴリの名称と考え、制作された「質感地図」があります。
日本語の触覚に関するオノマトペを42語集め、それぞれの語が持つイメージを実験によって調べ、イメージの近いオノマトペが近く配置されるように作られたのが、下図のオノマトペ二次元分布図です。この分布図は、日本人が質感をどのようにカテゴリ化しているのかを、空間的に表した質感の地図と言えます。分布図を見ると、近い質感を表すオノマトペが、空間的にも近くに位置していることがわかります。左上に「じゃりじゃり」や「じょりじょり」といった粗い質感を表す語が、右下には「つるつる」や「すべすべ」といった滑らかな質感を表す語が集まっています。また、「こちこち」や「こりこり」などの硬い質感を表す語が左下に、「ぐにゃぐにゃ」や「ねちょねちょ」という軟らかい質感を表す語が右上に集まっています。さらに、右中央付近には「ぬるぬる」や「にゅるにゅる」という湿り気の質感を表す語、左中央付近に「がさがさ」や「かさかさ」という乾いた質感を表す語が集まりました。このように、分布図を使うと質感のカテゴリやその分類基準について考えることが可能になります。そして、この分布図上に分類や評価をしたい素材を配置すれば、素材間の関係性を把握することができます。また、もちろん、このような分布図は、テキスタイルやインテリア、木材、紙など、素材の分野ごとにオノマトペを収集し、作成することも可能です。その分布図を利用すると、特定の分野の素材間の関係性が簡単に把握できます。
日本語の触覚に関するオノマトペを42語集め、それぞれの語が持つイメージを実験によって調べ、イメージの近いオノマトペが近く配置されるように作られたのが、下図のオノマトペ二次元分布図です。この分布図は、日本人が質感をどのようにカテゴリ化しているのかを、空間的に表した質感の地図と言えます。分布図を見ると、近い質感を表すオノマトペが、空間的にも近くに位置していることがわかります。左上に「じゃりじゃり」や「じょりじょり」といった粗い質感を表す語が、右下には「つるつる」や「すべすべ」といった滑らかな質感を表す語が集まっています。また、「こちこち」や「こりこり」などの硬い質感を表す語が左下に、「ぐにゃぐにゃ」や「ねちょねちょ」という軟らかい質感を表す語が右上に集まっています。さらに、右中央付近には「ぬるぬる」や「にゅるにゅる」という湿り気の質感を表す語、左中央付近に「がさがさ」や「かさかさ」という乾いた質感を表す語が集まりました。このように、分布図を使うと質感のカテゴリやその分類基準について考えることが可能になります。そして、この分布図上に分類や評価をしたい素材を配置すれば、素材間の関係性を把握することができます。また、もちろん、このような分布図は、テキスタイルやインテリア、木材、紙など、素材の分野ごとにオノマトペを収集し、作成することも可能です。その分布図を利用すると、特定の分野の素材間の関係性が簡単に把握できます。
42語のオノマトペの印象を分析して得られた触質感のオノマトペ分布図
参考文献:“ オノマトペを利用した触り心地の分類手法”早川智彦,松井茂,渡邊淳司 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 15(3), 487-490, 2010.